ヨーロッパの風景europe view
遊びの中で楽しく学ぶ先進国スウェーデンの幼児教育
in Stockholm 2024.9
小児病院で重要な役割「遊びのセラピスト」
病気を忘れ日々楽しく遊びながら治療を受けられる仕組みづくりとは
9月の冷たい雨の中アストリッド・リンドグレン小児病院を訪ねました。そこは 0歳から19歳までのこどもであれば感染病でない限り誰でも入れる病院、様々な病気になってしまったこどもたちが、いかに病気のことを忘れ日々楽しく遊びそして病気と闘いながらもきちんと教育を受けられるよう、素晴らしい取組みがなされている現場を見学させて頂きました。
ここで大切な役割を担っているのが「遊びのセラピスト」と呼ばれる幼児教育のプロたち、遊びながらリハビリができる仕組みや精神面でのケア・サポートはもちろん、医療チームや医学療法士などとも連携しながら強力なチームワーク体制で一人ひとりの治療にあたっています。こどもにとって遊ぶことは何よりも大切、その為ベッドの上でも遊べる様々なおもちゃが用意され音楽室やビリヤードルームも完備、光や水を使って心や脳に刺激を与えることができる神秘的な部屋もありました。そして院内に図書室や小さな学校もあり7歳から18歳までのこどもたちを2名の先生が教えているそうです。こどもはどんな環境にあっても皆平等に教育を受ける権利が学校法で保障されており、部屋から出られないこどもには先生が部屋に出向いて教えるのだそうです。
そしてもう一つ大切な権利は自分の病気について知る権利(2015.1.施行)、なぜここにいるのか、どのような検査をしてどう治療していくのかわかりやすく説明を受ける権利です。院内にはその為の部屋が設けられており、絵やぬいぐるみを使って実際にどんな検査をするのかを説明したり、赤い色水を使った血液採取なども針は使わないものの実際の検査器具を用いて本番さながらに疑似体験をさせたりMRI検査の実際の音を聞かせたりと様々な方法を用いて恐怖心を取り除く工夫がなされています。検査や治療がこわくないと知ってもらうことでリラックスして積極的に受けてもらうことを目的としています。弱い立場にあり友だちや近しい人と離れてしまったこども達には特別なケアや保護が必要です。こどもが病気の場合保護者には1年に90日間仕事を休む権利が与えられ、保護者の1人はこどもと一緒に泊まることも可能です。
一番心に残った「医療の考え方のベースが病気ではなくこどもにフォーカスしている」という言葉、日本とは大きく違っていると感じました。これはこどもに限らず大人であってもそうあるべきだと思いますが、どうしても病気そのものにフォーカスしてしまいがちで、患者さんの知る権利や心のケアまで果たしていき届いているのだろうかと考えてしまいます。医療と教育のプロが連携して一人ひとりのこどもにとっての最善を一番に考え、共に協力し合いチームとして取り組む素晴らしいスウェーデンの医療現場を垣間見た瞬間でした。全ての真ん中にはいつも「人」がいてその周りを深く大きな愛がとりまいている。そんな心があたたかくなるような思いを何度も経験した今回の旅でした。
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